--- date: "2023-10-13T22:40:57+0900" --- #memo ### 実験ベースの科学のフラジャイルさ 例えば[[スピンコーター]]を最初に立ち上げた時、3000rpm/30sが標準の設定になっているが、実際どのくらいのスピードで何秒回すとちょうどいいのか全く検討がつかない。そこで参考にしている論文をいくつか漁ってみると、なぜかみんな大体3000rpm/30sでコートしていたりする。 スピンコートの回転数or時間が成膜に与える影響が主題になっている論文でもない限り、わざわざ回転数と時間のパラメータを大量に並べてパターンを増やすことはしない。分析時のパラメーターが増えるし。 じゃあそうした、消極的に設定されたパラメーターが何を基準に決められているかといえば、おそらくは参考にした論文と同じパラメーターを使って、そこから1箇所だけ新しい要素の変化を加えて違いをみる・・・というのがいわゆるサイエンスの営みだと思っていたんだけど、実際のところはその辺は省略されて「今回はこの値を使った」という結果だけが論文には残されていて、全てのパラメーター設定に根拠が示されるわけではない。少なくともそれが査読に通っている。 大体、全てのパラメーターについて記述することは確かに現実的ではない。例えばゾルゲル法ZnOベースのトランジスタならとりあえずは次のパラメーターが考えられる・ - 使う基板 - 前駆体溶液の主材料(酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、etc) - モル濃度は? - 溶媒(エタノール、メタノール、プロパノールetc) - 添加剤(モノエタノールアミン、ジエタノールアミンetc) - 粘性(viscosity) - 主材料に対する濃度は? - 塗布方法 - スピンコート - 回転数 - 時間 - ディップ&ソーク - 引き抜き速度 - 塗布回数 - 乾燥温度と時間 - アニーリング温度と時間 これだけでも結構な数だが、増やそうと思えばまだまだ増やせる。 - 使う基板 - 前駆体溶液の主材料(酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、etc) - モル濃度は? - 溶媒(エタノール、メタノール、プロパノールetc) - 添加剤(モノエタノールアミン、ジエタノールアミンetc) - 粘性(viscosity) - 主材料に対する濃度は? - **混合は?** - **どのくらいの時間攪拌する?** - **攪拌後どの程度時間をおく?** - 塗布方法 - スピンコート - 回転数 - **回転加速度の分は?** - 時間 - ディップ&ソーク - 引き抜き速度 - 塗布回数 - 乾燥温度と時間 - アニーリング温度と時間 - **温度上昇/下降の加速度は?** - **雰囲気ガスは?** これだけいろんなパラメーターがある中で、レビュー論文とかが、「どの要素がどう影響を与えたか」についてを、XRDやSEMなど出来上がったものの観察から、時に反応のモデルのinductionを交えて議論している。 しかし、「この特性が欲しいならこのパラメーターをこう変えれば良いと思われる」みたいな指針をレビュー論文は決して出してくれない。 そうなると、とりあえずなんでもいっからZnOトランジスタ一番簡単に作りたいな!とかなったとしても、一番スタンダードなやり方みたいなのが想像以上に定まってなくてビビる。