From 5188e8823025228b005e5ee3b7b0a3d3fe48a368 Mon Sep 17 00:00:00 2001 From: =?UTF-8?q?=E6=9D=BE=E6=B5=A6=20=E7=9F=A5=E4=B9=9F=20Matsuura=20Tomoy?= =?UTF-8?q?a?= Date: Fri, 5 Dec 2025 17:49:56 +0900 Subject: [PATCH] [obsidian] vault backup: 2025-12-05 17:49:56[ --- content/コードとデザイン 授業設計の覚書.md | 28 ++++++++-------------- 1 file changed, 10 insertions(+), 18 deletions(-) diff --git a/content/コードとデザイン 授業設計の覚書.md b/content/コードとデザイン 授業設計の覚書.md index 4486bd4f..33fcb055 100644 --- a/content/コードとデザイン 授業設計の覚書.md +++ b/content/コードとデザイン 授業設計の覚書.md @@ -11,8 +11,7 @@ 本稿では、2023年度から2025年度にかけて筆者が担当したAMC開設授業「コードとデザイン」の授業設計とその反省について記述する。 -本稿の第一の目的は、近しい領域における授業の実施を検討している教員への参照点を示すことだ。本授業の設計でも大きな参考とした"Code as Creative Medium"においても触れられているように、デザイナーやアーティストがプログラミングやコンピューティングを学ぶためのリソースはあっても、それを教える人のための指針やドキュメントは多くない。実際本授業も、全てをゼロから設計したわけではなく個別のWSなどは筆者自身が学んだ中で実際に受けた授業や、関連する領域で行われている授業の内容をそのまま使用しているものも多い。教員の時間は有限であり、授業初年度は様々な業務の合間に毎週次の授業のスライドやWSの準備をしなくてはならない。 - +本稿の第一の目的は、近しい領域における授業の実施を検討している教員への参照点を示すことだ。本授業の設計でも大きな参考とした"Code as Creative Medium"においても触れられているように、デザイナーやアーティストがプログラミングやコンピューティングを学ぶためのリソースはあっても、それを教える人のための指針やドキュメントはそう多くない。教員の時間は有限であり、授業初年度は様々な業務の合間を縫って毎週のように次の授業のスライドやWSの準備をしなくてはならない。そうした中で、15回の授業をどのように設計し、どのような反省点があったかを記録するだけでも、今後の教育者のための何かのの参照点となることを期待する。 ## 背景 @@ -20,33 +19,26 @@ 授業設計上の制約としては、まずあらかじめ決まっている時間の長さ(90分×2コマx15回)がある。また、他のAMC開設授業の中には映像表現、音楽等を取り扱う授業はあるものの、電子工作のようなハードウェア要素の強い授業は他にないため、全体のバランスとしてハードウェアの取り扱いを中心に据える必要もある。 -さらに特徴的な制約としては、想定される対象履修者の幅広さがある。芸術情報センターには直接学生が所属せず、美術、音楽、映像問わず全学科の学生が任意で芸術情報センター開設授業を履修できる。学部1年生から大学院博士課程まで履修する可能性がある。それゆえ全くプログラミングをしたこともない学生、Arduinoだけは軽く触ったことのある人、既にモーターなどを使用した工作の経験まである人など、前提知識には例年大きなばらつきがある。また技術的な知識の差ほかにも、芸術学科、楽理科や音楽環境創造科の学生のように、必ずしも作品制作を主軸に置かない学生も存在するため、それぞれの目的意識にも広がりがある。 +さらに特徴的な制約としては、想定される対象履修者の幅広さがある。芸術情報センターには直接学生が所属せず、美術、音楽、映像問わず全学科の学生が任意で芸術情報センター開設授業を履修できる。学部1年生から大学院博士課程まで履修する可能性がある。それゆえ全くプログラミングをしたこともない学生、Arduinoだけは軽く触ったことのある人、既にモーターなどを使用した工作の経験まである人など、前提知識には例年大きなばらつきがある。 ### 授業設計の指針 -授業全体の副題を「パーソナル・パーソナルコンピューターをつくる」と設定した。 +本授業全体の副題として「パーソナル・パーソナルコンピューターをつくる」と設定した。 -授業を設計するにあたって意識的に行ったことの一つが、既存の授業資料やワークショップを積極的に活用することである。特に、前半の授業は筆者が2018年に参加したニューヨークのアーティスト・ラン・スクールであるSchool for Poetic Computation(SFPC)のカリキュラムである。 +授業を設計するにあたって意識的に行ったことの一つが、全てをゼロから作るわけではなく、既存の授業資料やワークショップを積極的に活用することであった。特に、前半の授業は筆者が2018年に参加したニューヨークのアーティスト・ラン・スクールであるSchool for Poetic Computation(SFPC)のカリキュラムを参考にした。特に参考にしたのは、スクール設立者の一人であるTaeyoon Choiによるワークショップと、アーティストユニットCW&Tによるハードウェアの授業である[^sfpc2018]。 +[^sfpc2018]: 2020年以降、コロナ禍の影響及びSFPCの運営体制変更に伴い現在のSFPCではハードウェアの授業は実施されていない。 -## 到達目標の設定 +本授業の前提として、パーソナル・コンピューターは1980年代以後に爆発的に普及したものの、当初根底の思想として研究されていた個人が自由に入出力を作り変えられるメディアとしての性質を十分に発揮できていないという歴史観がある[@emerson2014]。アプリストアの公証を受けなければインストールが許されなかったり、ユーザーによる内蔵ハードウェアの交換可能な範囲が年々狭くなっていく中で、たとえばArduinoのようなマイクロコントローラーによって自分だけのコンピューターインターフェースを制作することを、現代において**よりパーソナル**なパーソナル・コンピューターを作る行為と呼べるのではないか、といった考えを念頭に最終目標を設定している。 -パーソナル・パーソナルコンピューターをつくる - -最終課題の自由度 - -- 完全自由制作 - - 他の授業における前期の課題制作に、授業で学んだ要素が生かされているならば重複してもよい -- 授業内小課題(後述)の発展 - -全員が作品制作を最終ゴールとしていないこと。作品そのものではなく自分の製作に役に立つツールを制作する - -AMC解説の演習授業は必ずしも卒業要件に関わらない自由科目として選択されることも少なくないため、最終課題制作期間に自分の専攻の課題制作が重なることで忙しくなり、履修を継続できなくなることが往々にしてあることへの配慮である。 +またこの最終目標は、最終課題制作に一定の自由度を与えることも意図している。本授業の最終課題は完全自由制作か、後述する授業内小課題を発展させたもののいずれかを選択できるようにしている。完全自由制作については、自分が履修している他の同時期の授業における課題制作に、授業で学んだ要素が生かされているならばそれを提出しても良いことにしている。これら課題設定の背景にはAMC開設授業の性質上、自分の所属する学科の授業課題に比べて優先度が低く、学期末に課題が集中することで途中離脱することを避ける意図も含んでいる。 +また最終課題は作品ではなく、作品制作のために使う道具であったり、日常的に使う生活用品のようなものでも良いことにしている。これは、芸術学科、楽理科や音楽環境創造科の学生のように、必ずしも作品制作を主軸に置かない学生も存在するため、それぞれの目的意識に合わせた制作を行えるような意図である。 ## カリキュラム -シラバスより転用 +カリキュラムは全体として、コンピューティングの概念と基礎理論を理解するためのパート、Arduinoのチュートリアルパート、最終課題制作のパートと3つに分かれており、最終課題以外は概ね1コマごとに1WSを実施するような構成になっている。 + 1. Conditional Design Workshop 2. Victorian Synthesizer/ Tympanic Alley